ハンディバイク6インチ、8インチのリペアムゲル注入タイヤの問題に関する件。
■本件はハンディバイク6インチ、8インチだけに発生している特殊な問題であり、「普通の状態で注入すると、発生のタイミングは個々で異なりますがほぼ100%下記の問題が発生します。12インチ以上の一般自転車には発生していませんのでご安心ください。「一般自転車と同じようにゲルを注入してもらったがおかしくなってしまった方」、ご参照ください。
・当問題はタイヤ表面の長距離走行や急ブレーキによる磨耗で擦り切れてゲルがタイヤから出てくるのとは内容が違います。

2005年春〜夏に多発しましたハンディバイクのリペアムゲル注入タイヤの諸問題が解決し、2005年9月より下記対策を施しています。対策後約1年経過していますが、今のところ下記に関する問題は一件も発生しておりません。多くのお客様からデータ提供をしていただきました。ご協力ありがとうございました。


ハンディバイクへの注入依頼
背景  極小径の6インチ、8インチの自転車に乗られる方が、購入後最初にぶつかる問題が「すぐにパンクする。」「自分で空気を入れることが難しい。」です。刺さり物のパンクより、「小径がゆえのチューブへの強いストレス」と「チューブそのものの質が悪い」ため、パンクするのが必然的な代物です。そこでユーザーから支持されたのが、パンクを絶対にしない「リペアムゲル」です。2004年の秋口からリペアムゲル注入のユーザーが増えてきました。
問題  2005年の春口より、リペアムゲルを注入した6インチ、8インチの自転車に下記のような問題が多発し始めました。

●走行中突然固まっているはずのゲルが崩れ、タイヤからゲルが飛び出してきてしまう。特に炎天下の日にその現象が起きやすい。

●走行中崩れこそはしないが、バルブ口根元からゲルの粉が出てきてしまい、タイヤがしぼんできてしまい、走行が不安定になる。

●乗らないでしまってあるだけなのに、バルブ口根元からゲルの粉がでてきてしまう。
原因  実験の結果、下記3つの原因が絡み合ってこの問題が起きていることが判明しました。尚、この現象は極小径の自転車におきているものであり、一般の自転車には一切発生していません。6インチ、8インチのみの現象です。

(1) 120℃以下の低温で注入した場合、ゲルが積層的な固化をしてしまい、ゲルが一体化していないため、走行中にゲルが崩れ、チューブ内径側を破裂させてしまいゲルがタイヤから出てきてしまう。(2005年以降、全国リペアムショップでは注入時のチューブ破裂を避けるために120℃近辺での注入が推奨されてきたため。一般自転車はこれが正解です。)

(2) 140℃〜160℃で注入すると(1)の問題は回避できますが注入時にチューブが破裂しやすくなる。

(3) (1)、(2)でチューブがたまたま破裂がなくても、炎天下の外気温に2〜3日さらすだけ(走行しなくても)で、ゲルの膨張でチューブ内径側が裂け、ゲルの粉カスがホイールのバルブ穴からどんどんでてきてしまう。キャリングバッグに入るような風通しの悪いところでもこの現象が起きることがある。

 6インチアルミホイールの主原因は(1)、8インチプラホイールの主原因は(2)、(3)が中心です。一般自転車と違い車輪がスポークではない6インチアルミホイールは、放熱が早くゲルが少量のため注入温度が低いと入れた瞬間から順次固まってしまうため積層固化がおきてしまいます。8インチは単純にチューブの熱耐性が異常に弱いため発生しています。ケースバイケースですがこれらの原因がからみあって上記の問題を引き起こしています。
発生理由  チューブが現時点では各メーカーともあまりにも熱耐性、機械的ストレスに弱すぎる。生産ロットによってもこの性質にかなりバラツキがある。裂けるのは必ず内径側で、裂けのスタートは必ずバルブ付け根から始まる。(1)、(3)ではその裂けが結果的に内径全部に行き渡ってしまう。これは空気を入れたときにパンクしやすいのと結果的には同じ理由です。
対策  試行錯誤しましたが、チューブ内径側をある方法で補強した強化チューブを作ります。この強化チューブをはめ、140℃〜160℃で注入すると上記問題は全て回避できています。(注入後水冷却半日。2日間直射日光のあたるコンクリートの上に放置しゲル漏れなきことを確認。)
●強化チューブは内径側を補強してあるため、かなり厚手になっています。そのためはめにくい6インチのタイヤが尚一層はめにくくなるため、タイヤを湯かんしても、はめる際アルミホイールに傷をつけてしまうことがありますので予めご了承ください。
参考実験資料:

 各条件の注入タイヤをそれぞれ作り、1本は走行前にゲルを取り出し、もう1本はBSハンディバイク6インチ後輪に装着し、実際に走行。完全に崩れてしまう前を見るために定量1km走行および実走行約50kmでゲルを取り出しています。

 タルク剤を混入したのは、ゲルを硬くして積層固化で崩れることが回避できるかを確認するためでしたが、結果は若干良い程度で積層固化とはあまり関係なく、やはり注入温度に左右されるものでした。しかしタルク剤を混入していくとゲルの硬度が硬くなっていきますので、今後、ゲル注入時の硬さをお客様のご要望に答えることができるようになります。(検討中)


 
温度測定:溶解タンク内の温度。デジタルマルチメーター+温度プローブで測定。測定温度に幅があるのは、ヒーターのON、OFFと溶解タンク内のゲルの熱慣性があるため一定の温度を継続すのが難しいため。

ハンディバイクへの注入依頼


●以前、チューブレスでのゲル注入を実験中である旨をお伝えしていましたが、タイヤを埋めるガスケット等にいずれ隙間ができて崩れてしまい、強化チューブより芳しくないことがわかりました。ノーマルチューブでバルブ口やタイヤとリムの隙間をガスケットを埋めてしまう方法も同様です。
積層固化問題の実験写真
通常ゲル
A-1

110℃〜125℃
走行前
全体写真

A-2

110℃〜125℃
走行前
内径側局部写真
←走行前に既に亀裂が入っている。大きい亀裂は目に見えますが、目に見えない状態で「バームクーヘン」のような固まり方を低温ではしてしまいます。

B-1

110℃〜125℃
1km走行後
全体写真

B-2

110℃〜125℃
1km走行後
内径側局部写真
←たった1kmの走行でその「バームクーヘン」の部分がほぐれてゲルのカスが発生してきています。

C-1

140℃〜160℃
走行前
全体写真

C-2

140℃〜160℃
走行前
内径側局部写真
←「バームクーヘン」のような積層固化をしていないので走行前から50km走行後まで崩れがありません。↓

D-1

140℃〜160℃
1km走行後
全体写真

D-2

140℃〜160℃
1km走行後
内径側局部写真

D-3

140℃〜160℃
50km走行後
全体写真
通常ゲル
+タルク剤
(重量比10%)

E-1

110℃〜125℃
走行前
全体写真

E-2

110℃〜125℃
走行前
内径側局部写真
←タルク剤を10%入れましたがやはり亀裂が発生しています。

F-1

110℃〜125℃
1km走行後
全体写真

F-2

110℃〜125℃
1km走行後
内径側局部写真
←タルク剤なしよりやや崩れる度合いは少ないですが、やはり崩れそうです。

G-1
140℃〜160℃
走行前
全体写真

←高温で注入すればタルク剤入りも走行前から走行後も崩れません。→
G-3

140℃〜160℃
50km走行後
内径側局部写真